読書記録『図書館員のための解題づくりと書誌入門(図書館サポートフォーラムシリーズ)』

筆者の著作である『装いのアーカイブズ』を執筆するまでに焦点を当てた本。タイトルの通り解題の作り方の本であり、著者の書いた解題の事例も複数収録されている。しかし筆者の展開する解題のレベルは私の想像よりはるかにレベルが高く、これは改めて執筆する理由も頷けた。ただ唯一の誤算だと思われるのは、本書でたびたび登場する『装いのアーカイブズ』の内容があまりに興味深く、そっちに関心がいってしまい細かな内容が頭に入ってこない気がすることか(笑)ちなみにこのタイトルの「書誌入門」の「書誌」とはビブリオグラフィのことであり、単一の書誌データのことではない。

第1章から第3章までは『館報池田文庫』の解題執筆から研究会発表、単著にまとめるまでの著者の行動や考えたことが書かれている。文献調査で原本に当たる大事さや記述スタイルについての言及など、この時点で解題について参考になることが多い。

第5章は「文献解題の書き方」はメインの章であり、解題の解説にあたる。冒頭で著者は解題の意義や機能を簡潔に大きく三つ挙げている。

  1. ある文献の書誌的事項を確認するために役立つ。
  2. ある文献の概要、特徴、価値などを知ることができる。
  3. ある主題または領域の研究史、研究方法、研究の手引きとすることができる。(64-65p)

本当に簡潔に挙げているが、ここに載せられていることが実際に伴っている書誌というのは使う側としてとてもありがたいが、書くとなると相当に骨の折れる作業なのがわかるだろう。この後著者の解題例が続くが、上記のポイントを踏まえた微に入り細に穿つ内容となっている。

本章の「おわりに」にもこうある。

書誌は、作成する目的によって、文献の配列、書誌的事項の記述、索引などの構成が編者により勘案されている。裏を返せば、書誌を用いるときは、その書誌的構成の理解なくしては、十分な活用はできない。書誌の利用法と作成とは、表裏一体である。(98p)

わかっているつもりで、意識していなかったのでとても印象に残っている。資料一つひとつにきちんと向き合えているか。読後も著者の言葉を何度も頭の中で反芻している。