読書記録『改訂 情報サービス演習(現代図書館情報学シリーズ7)』

改訂 情報サービス演習 (現代図書館情報学シリーズ7)

改訂 情報サービス演習 (現代図書館情報学シリーズ7)

私が司書資格を取った頃はまだこの科目はなく、「レファレンスサービス演習」と「情報検索演習」だった。
前者は図書館を使って専らテキストの課題を調べる科目だった記憶がある。後者は真夏の暑い中の集中講義でほとんど記憶にない。
ちなみに言うと前段階の情報サービス概説も集中講義で、このあたりの内容が欠落しているのはある意味仕方がなかったかもしれない。
ということで、今回は勉強のつもりでこのテキストを読んでみた。同シリーズの情報サービス概説の教科書はまだ読んでいないし、そもそも演習の教科書を実技抜きで通読することに意味はあるのか自分でも疑問だったが、いろいろ学ぶことがあった。

本書は2012年刊の樹村房のテキストが改訂されたもの。情報源はもちろん情報技術は変化がめざましいもので、そんな流れに合わせるために改訂が行われたという。
こういうのは同社の旧版か他社が出版しているの同名テキストと比較してどうのこうの言うべきだと思うのでここでは大枠でしか見ないが、圧倒的な量の情報源は特筆すべきだろうか。それらは現職のレファレンサーでもとてもカバーできているとは言えないものも多いだろう。況や自分のようななーなーな図書館員ならなおさらである。

1部 情報サービス演習の設計から準備まで
 1章 情報サービスの設計と評価
 2章 情報サービス演習の準備
2部 情報サービス演習の実際
 3章 情報資源の探し方
 4章 ウェブページ,ウェブサイトの探し方
 5章 図書情報の探し方
 6章 雑誌および雑誌記事の探し方
 7章 新聞記事の探し方
 8章 言葉・事柄・統計の探し方
 9章 歴史・日時の探し方
 10章 地理・地名・地図の探し方
 11章 人物・企業・団体の探し方
 12章 法令・判例・特許の探し方
 13章 2部に関する演習問題
3部 情報サービスのための情報資源の構築と評価
 14章 レファレンスコレクションの整備
 15章 発信型情報サービスの構築と維持管理
(部はローマ数字表記)

15章構成ということはそれぞれが一講義ぶんで半期の科目として想定されているということだろうか。そうなると3〜13回は延々演習が続くことになりそうだ(注・13章は演習問題一覧のみの章)。第1部は情報サービスとは何か、レファレンスサービスとは何かに焦点が当たる。第1章「情報サービスの設定と評価」によると、情報サービスとは「情報ニーズをもつ人に対して、その要求に合致した情報を得ることができるようにすること」と定義される。第2部では見ての通り調べ方の各論が解説される。ウェブページの探し方から判例、特許などのめずらしい内容のものまで扱う情報は多様である。興味深かったのは第3部で、レファレンスツールの評価の方法(14章)や、パスファインダー、リンク集の作成についてなど(15章)が扱われている。印象に残っているのが以下の2点である。

・レファレンスツールは評価基準をあらかじめ自館で決めておくこと
・レファレンス事例記録のためにレファレンス共同データベースに参加し、まず自館のみ公開から始めてみることをすすめる

なるほどレファレンスツールの評価基準をあらかじめ定めておくことは、複数人でそれらを管理する上で便利である。本書では評価基準とその評価の一例が掲載されていてなおさらよかった。レファレンスは結果の他にその過程、フィードバックが大事である。回答したらそれで終わり、ではないことをきちんと教えてくれる。また、レファ協に自館のみ公開があることは知らなかった。各館で事例蓄積のために活用ください、というNDLの良心設定なのだろうか。どちらにせよありがたい。

本書でいろいろな情報検索の方法を知ることができたが、改めてNDL(特にリサーチ・ナビ)のすごさを思い知った。時間があったらなるべく読んでみることにしたい。
また、この本は職場のデスクに置いておいて折に触れてチェックしてみたいと思った。さすがに実戦も伴っていないといけないだろうから。