斑鳩町立図書館〜法隆寺へ

行ってみたい場所は数えきれないくらいあるものの、ここ数年は出かける時間とお金のコストを考慮していつも家に引きこもってしまっていた。それは合理的な選択だったのか、はたまたただの吝嗇癖だったのか。不思議なもので、この一年くらい「自分の好きなところへ行ってみたい」という気持ちが再び湧いてきて、休みの日に出かけることが増え始めている。
そして先週私の頭に思い浮かんだのが、奈良県斑鳩町立図書館と法隆寺だった。斑鳩町立図書館と言えば奈良県内では有名な図書館らしく、特に聖徳太子法隆寺に関する資料を集めた聖徳太子歴史資料室は私もずっと気になっていた。実は私の手落ちで2週連続での来町となったのだが、ともかくこの2日間で聞いたこと・思ったことをまとめたい。

斑鳩町立図書館斑鳩町立図書館ホームページ

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JR法隆寺駅から徒歩10分弱。ひと際大きな建物なのですぐにわかった。図書館の入る「いかるがホール」には、他にも大ホールや会議室や喫茶室がある。図書館は1階なのだが、やはりとても広い。蔵書は14、15万冊*1とのことだが、館内は広々としていて窮屈な感じはまるでない。開館時間は大体5時までだが、土曜のみ夜9時まで開館しているとのこと。

・開館時間
平日 9:30-17:00
土曜 9:30-21:00
日曜 10:00-17:00
・休館日
毎週火曜(その日が祝日の場合水曜日も)
第2木曜日
国民の祝日
年末年始(12月28日〜1月4日)
特別整理期間

貸出冊数上限は8冊で、利用できるのは奈良県在住または斑鳩町在学・在勤と広範囲。斑鳩町の人口は2016年10月現在3万人を越えていないが、近隣には県庁所在地の奈良市などもあり、町外利用者も多そうである。なお『平成27年度 斑鳩町の図書館』(図書館年鑑)によると斑鳩町立図書館は「平成22年度実績で人口3万人未満の自治体の中で年間個人貸出冊数全国1位」を記録している。

さて来訪の目的だった「聖徳太子歴史資料館」は2階。階段を上ると少し小さな部屋がそこにあった。聖徳太子歴史資料館は斑鳩町聖徳太子法隆寺に関する資料を扱う、いわば郷土資料コーナーのようである(ただし1階にも郷土資料に分類されている資料のコーナーあり)。職員の方の話によると、江戸末期以降に出版された貴重書扱いの資料も扱っており、レファレンスに定評のある司書の配置が行われているという。開室は平成22年5月で資料は約6,000点。近隣市町村史や町内在住者の著作も収集している。
来館前から聞いていたが、聖徳太子歴史資料室を開室してからレファレンス受付が急増したとのことだった。法隆寺の案内のボランティアをしている人たちが調べものに来ることもあるという。法隆寺聖徳太子に関して単館でここまで資料を揃えている公共図書館は他にはなさそうである。小学校の自由研究などでも来室者が多いのではないだろうか。
今年2016年7月1日からは国立国会図書館デジタル化資料送信サービスの閲覧・複写にも対応。聖徳太子法隆寺について調べる環境がさらに整った。

そしてもうひとつ目を引いたのが、斑鳩町デジタルアーカイブ斑鳩の記憶データベース」だった。住民などから昔の町の写真を収集し、それぞれを町の地図に当てはめることで、かつてのその場の風景と人々の生活を知ることができるというもの。聖徳太子歴史資料室、京都大学地域研究統合情報センター(CIAS)、金沢大学新学術創成研究機構(InFiniti)、RAD(Research for Architectural Domain)の協働事業で、2015年10月から公開されている。「ABOUT」の「3.事業の背景」には以下のように書かれている。

斑鳩町には、数多くの貴重な文化遺産があります。一般的には、その多くは観光資源として認知されていますが、斑鳩に住む私たちにとって、それらは日常生活と密接に関係を持っています。例えば、三室山の桜や竜田川の水辺空間などは、歴史的にも知られた場所であるだけでなく、私たち斑鳩の住民がお花見をしたり、犬の散歩をしたり、子どもと戯れる大切な場所と言えるでしょう。
つまり、私たちの生活の場の中で育まれてきたモノや風景、習わしや記憶もまた、重要な斑鳩の宝物であるはずです。それは現在の斑鳩の住民の生活だけではなく、未来の斑鳩の住民一人一人に残していくべき価値を持っている、いわば未来の斑鳩の生活資源であり、それらを丁寧に集めていきたい―そうした思いから、聖徳太子歴史資料室では「斑鳩の記憶」アーカイブ化事業を進めています。(ABOUT | 斑鳩の記憶データベース 2016.10.31取得)

自分の住んでいる地域が昔まったく違った姿をもっていたことを知れば子供たちはとても驚くだろうし、面白いと感じるに違いない。また、かつてを知る人々もそれを見て懐かしい思いに駆られることだろう。とても素晴らしい取り組みだと思うが、(これまたお話を伺った職員さんによると)事業開始当時はほとんど写真が集まらなくて苦労したという。もちろんまだ公開1年ほどで、これからさらに強まったアーカイブになっていくに違いない。余談だが、来室当日このデータベースのためのワークショップが隣室で行われていた。どんな様子なのか少し覗いてみたい気がした。

法隆寺

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面白い取り組みをする図書館を見たからなのか、はたまたここに来る下準備のために図書館に立ち寄ったのか、自分のことのくせに判然としないが、ここまで来たら法隆寺も参ってから帰りたい。結論から言うとこのプランは次の週に持越しとなったのだが、この日は天気もよく、ゆっくり見て回ることができた。町立図書館とは真逆でJR法隆寺駅から北へ徒歩20分。バスを使うこともできたが、行きの行程くらいは街並みを楽しみたかったため、敢えて歩きを選択。拝観料は1,500円。聞いていたより安かったのだが、特別の秘宝展にも入ったし、法隆寺発行の最新ガイドブックも購入し、結構なお金を使ってしまった。
幸いにも日曜の昼過ぎにしては空いていた。おかげで五重塔や金堂をゆっくり見ることができたが、西院伽藍の中門が工事中で有名な金剛力士像を観ることができなかったのが悔やまれる。
1998年完成の大宝蔵院は寺宝を集めた建物で、拝観ルートのおよそ中間にあたる。百済観音や玉虫厨子などがおさめられていて見応えがあった。同じ時間に回っていた修学旅行の学生たちはガイドさんに15分で見て回るように指示されていたが、あれは少し可哀想だろう。特に印象に残ったのはやはり百済観音である。2メートルを越えるその大きさもあるだろうが、独特の(どこか優しげな)オーラを感じた。
ルートの最後に回る東院伽藍は少し離れており、この頃には周りの拝観客たちも少しバテ気味。夢殿は救世観音、聖徳太子十六歳孝養像をじっと目を凝らして見る人で溢れ、ここだけはかなり混んでいた。

法隆寺を出るころには1時間と40分ほど経過していた。本音を言うともう少し時間が欲しかっただろうか。次に来ることがあれば、この日購入したガイドブックをさらに読み込んでおきたい。

*1:公民館の図書室も別に3つあり。