読書記録『読書イベント実践事例集:学校図書館が動かす』

読書イベント実践事例集: 学校図書館が動かす

読書イベント実践事例集: 学校図書館が動かす

千葉県市川市の公立小学校・中学校で行われた読書イベントの実践集。
学校図書館の展示やイベントなどの実践記録集は類書がかなり出ているが、(それらすべてを確認しているわけではないので勝手な想像だが)敢えて差別化するなら「学校の図書館に収まらない学校全体を巻き込んだ読書イベント」の実践が本書の半分を占めていること。
最初に目次を見た時記事の担当者が教諭職ばかりだったので、公立学校の司書教諭たちが記事のすべてを担当したのかと思ったが、奥付によると執筆のメインは市内の学校に勤務する学校司書たちであった。
そのまま使える付録つきの三章構成で、

第一章「全校で取り組む「週間」「旬間」「月間」の読書イベント」
第二章「図書館中心のイベントあれこれ」
第三章「読書イベントの企画から広報まで」

の三本立てとなっている。

まず第一章だが、この章は本書のおよそ半分のウェイトを占める。読書イベントを行う意義や手続きの解説と、七つの実践例が収録されている。これらは期間を定めたイベントなので、例えば1日目の業間休みの低学年は「○○」を、2日目の昼休みの高学年は「××」を、といった具合にそれぞれの実践例に複数のイベントが組み込まれている。学校図書館のイベントでは実施サイドが著作権絡みで悩むシーンがよくあるが、その都度注釈でそれらの解説がなされるので良心的である。
第二章は学校図書館中心のイベントが紹介されている。あくまで開催主体が図書館なだけで、開催場所は図書館とは限らない。「教員側の負担を増やさないように」といった学校司書の心構えも紹介されていて、同僚に対する思いやりも感じられた。またこの章では中学校での実践にも焦点が当たっていて、個人的に「図書館PR集会」とその原稿「モジモジしないで楽しんでやりきりましょう!!」がユニークで好きである。あと「検定イベント」は手軽で面白そうなので真似してみたいと思った。
第三章ではこれらの実践を現場に活かすため、改めて企画の手順を丁寧に見ていく。

各地の学校図書館の実践が本になることは、最近ではそこまでめずらしいことでもないのかもしれない。だがそれでも人を引き付け、同業者が「真似してみたい」「話を聞いてみたい」と支持するような報告でなければこうして本になることはないはずである。学校司書と司書教諭の協働で出来上がっている、その点も押さえておきたいポイントである。