読書記録『パスファインダー作成法:主題アクセスツールの理念と応用』

パスファインダー作成法:主題アクセスツールの理念と応用

パスファインダー作成法:主題アクセスツールの理念と応用

そろそろ言っておくが、私は樹村房の回し者とかではない(笑)同社の本が続いているのはたまたまである(関係書をたくさん出しているのもあるが)。

タイトルの通り、パスファインダー作成法を語った教科書のような本。ページも多くなく一件敷居が低く見えるが、「こんなにお手軽!1時間でできちゃうパスファインダーの作成法!」みたいなわけあるはずがなく、主題の分析を徹底解説する骨太な本となっている。ちなみに公共や学校でよく流通する一枚ものの紙媒体のパスファインダーとはまったく印象が異なるが、主題の分析の重要性などは間違いなく通底しており、自分の所属する業界では聞きなれない言葉が出てきても投げ出さないのならば、本書は必ず力になる本だと思われる。

本書はLCSHを徹底活用して主題の分析を行う方法を解説している。主に大学図書館が想定されているため、利用ニーズの把握のためにシラバスの分析も行うし、パスファインダーに掲載予定の情報資源媒体それぞれもすみずみまで調査することが書かれている。

第一部 図書館パスファインダー
第1章 概説
第2章 求められる機能
第3章 構造の特徴
第4章 作成の流れ
第二部 主題分析の応用
第5章 主題の分析
第6章 カリキュラムの分析
第7章 情報の収集
第8章 情報資源の主題分析
第三部 進化する主題検索ツール
第9章 ディスカバリーサービスとパスファインダー
付録 『パスファインダー作成法』の布石―本書ができるまで―

*部数の漢数字はローマ数字

本書は三部構成となっており、パスファインダー全体の解説にあたる第一部と主題分析を徹底解説する第二部が本書の肝と言えるが、個人的には第三部の「進化する主題検索ツール」、付録「『パスファインダー作成法』の布石」から読んだ方が著者の意図がわかりやすくて良いように思われた。特に付録は著者がなぜパスファインダーに取り組み始めたか、その元となる問題意識が明らかになるので、本文で伝えたいことがなおストレートに入ってくるように思われる。

第一部はパスファインダーに求められるものの解説・分析が丁寧で、わかりやすい。第二部は分析の基礎の基礎からスタート。ゾウを用いた分析の説明がユニークである。また統制語彙の扱いがメインになるが、これは本文中幾度となく出てくるLCのウェブサイトを触りながら読むことをおすすめする。第三部はディスカバリーサービスの解説が入り、パスファインダーとの共通点が語られる。最後はすでに書いてある通り「付録」で、本書が生まれるまでの話である。この布石から本書が出来上がるまでに15年以上経過しており、大学図書館勤務未経験、パスファインダー作成経験なしの私は時代に取り残されているようで、慌てて勉強し直したくなった次第である。